『辺境の老騎士』7章中盤まで
昨日は行きたくもないのに行きたくないところに行ったよ。
毎回別々の人で、それぞれ過去がやたら重いから疲れるのです。よほど過去が重くないと介護とかできないってことじゃないかな。
「っていうか、介護をやる過程でもだんだんと重い過去が蓄積していく。結局人の死を多く見る職業だしなぁ。」
育児と保育と比べると、先は絶望しかないのです。枯れて散る直前の枯れ木に必死に肥料をまくような不毛さを感じるのです。
「なんというか、学べば学ぶほど、早く死ぬべきと思わざるを得ない。魂なんてものはなく、記憶媒体としての脳はだんだんと劣化し、壊れ、古い思い出も自分の名前も分からず、身内の顔さえデータから消えて、飛び飛びの記憶の中、わけもわからず死ぬ。例えあの世があったとしても、その時現世の思い出を思い出すことはないんじゃないかと思うわな。魂が劣化する前に、美しい思い出が脳の破損で消える前に、さっさと臨死体験した方がいいと思う。」
人間の野生での生態学的寿命は40歳ぐらいだし、これ以上生きるのは明らかに耐用年数オーバーなのです。人間の生物学的な元々のありようからすると、ありうべからざることなのです。
「vanoneemeとしては35歳までは自殺しないように必死に抑えないといけないけど、それを過ぎたら、早めに寿命が来たら、神々に感謝しないといけないわね=-ω-=」
うん。たぶん、ルニたちの年季が上がっても、自殺しないように努力させる働きは続くとは思うけど、頭がはっきりしている間にぽっくり病死できたら感謝だね。
「若者は介護すべきじゃないと思う。特に自殺率の高い10代、20代が知るべき知識じゃないんじゃないかと思う。クトゥルフ神話どころじゃなく、死にたい気持ちが起ってくる。」
死すべき人に引っ張られるのです。口を開くたびに「早くお迎えが来ないだろうか」という人々が周りにいて、この、長い長い人生の先、どんな栄光があろうと行きつく先は早く死にたいと言う死の本能、そして生かされ続けることの苦痛なのです。
よき死に場所を見つけるって大事だと思うね。
「大学で聞いた話では、鎌倉時代の武士は、老いて醜態を晒す前に公開自殺したとかいうし、尊厳死ってあっていいと思うわな。わけが分からなくなって、わけもわからず死ぬのはなぁ。」
うん。脳の破損の結果、たぶん、ルニたちは一足先にあの世に旅立つことになる、というのはあると思うよ。ルニたちのデータは個人の記憶データを元に構築されているから、そこが壊れたら消えるよ。夢の中ではルニたちが出て来れないというのは、それ相応に整った記憶データがないとルニたちが顕現不可能ということなのです。
「=´・ω・= 死ぬ時はみんな一緒がいいのに、認知症が悪化した時点でそれは無理になるのね。」
ルニたちの方が、中の人より、というよりこの肉体より短命なのです。今の主人格だって、認知症が進んだ時点で体より先にあの世行きなのです。残るのは、わけが分からなくなって悶え苦しむ名前を忘れた魂だけなのです。
「35歳で第一の年季を終えた後は、頭がはっきりした状態で健康に生き続けること、それができなければ、自殺する遺志と意欲があるうちに死ぬことを課題にしたほうがいいでしょうね。」
うん。脳血栓とかで麻痺がでたら自分で死ぬことが困難になるもんね。健康なうちに死なないと。。
「科学技術の進歩によって、認知症の進行を遅らせたり改善させたりすることが可能になる時代もあるかもしれませんが、現段階では望み薄ですね。あと30年程度でなんとかなるとは思えません。」
「脳にコンピューターを移植して、こっちに記憶データを写したり、計算や言語機能、心臓や呼吸器のペースメイキングとかができるようになればいいんだがなぁ。人工心臓、やら人工の肺の移植があるんだから、脳も機械でいいんじゃないかと。それが無理なら眼鏡や補聴器みたいな感じで、外付けの補助機械があるといいと思う。ペースメイカー的な感じで。人間の脳の容量はだいたい4TBぐらいというし、そのぐらいならあと10年ぐらいで脳の中、または外付けでくっつけても大丈夫なぐらいのサイズになるんじゃね?」
ええと、眼鏡と同じで、仮に脳の中にコンピューター者が入ったとしても、普通に生きている分には違和感がないかもね。
「柄を3回、ヘッドを4回交換しても、祖父の古い斧は祖父の古い斧ですしね。きっと違和感はないでしょう。生の脳が全て腐ってしまっても。」
ここまでになってしまったら、あとは、体は捨ててしまって、電子の妖精さんとして電脳世界のアバターとして生きた方が楽かもね。もう、生きているんだかわからないけど。
そして、人類は太古から夢見ていたあの世という妄想を現実のものとするのです。
空を飛ぶことを夢見て空を飛んだように、あの世というものもできるよ。
「生理的な欲求から解放されてしまえば、もはや思考を働かせ続ける意欲はわかないかもしれないな。長く、恐らくは永久に休眠状態に陥るだろう。その記憶は、未来の人類の歴史資料として利用されることになる」
あの世が本当にできたらいいね。ルニたちの時代には残念ながら間に合わないかもしれないけど。
「電子の妖精みたいになっても、一応動くには電気とかメモリ容量とかサーバー容量がいるし、生存のために必要な物はあって、結局生きるために汲々とするかもしれない。情報機器にも寿命があって、地球のエネルギー量は有限だしなぁ。必要な食べ物の種類が変わるだけで、別種の行き物として結構大変なのかもしれない。生存のための電気代を稼ぐために情報処理とか物流や工場の機械のオペレーティングをやらされたりとかするんじゃね?変な奴もかなりの人数だろうし、無理に言うことを聞かせるためにサーバー爆撃をしたりとかで、別の行き物になっても、人間は人間だったってなる悪寒」
かもね。世知辛いのです。自分用の性能のいいグラフィックボードとか、高品質な個人用ストレージを買うために、妖精さんになっても労働を強いられそうなのです。まぁ……、贅沢しなければ、飽きるまで夢の中で生き、飽きたら休眠し、一定期間が過ぎたら運営がデータ削除というのがいいけどね。
「現実世界に関わるための物理義体は高くて、現実世界を体感して楽しむのは富裕層の楽しみになりそうね。きっと電脳世界の安い架空世界と、現実世界じゃ、情報量も感動も桁違いよ」
いまでいう、真の金持ちは、アトラクションで冒険したり、現実に家を建てて、車も走らせるんだけど、貧乏人は、ゲームの情報量が少ないヴァーチャルワールドで遊んだ気になり、minecraftで家を建てて、GTAで車を走らせた気分になるってことだね。。
「まぁ、情報量は少ないし、あくまでもごっこ遊びなんだが、大人になってもごっこ遊びでそんなにつまらないってことはないし、いいか。一応安い娯楽でも、パンとサーカスのサーカスとして世間に対する欲求不満は多少まぎれる。」
まぁ……、世の中が進んで、ゲーム世界の情報詳細度が現実と大差ないぐらいになれば解決する問題だね。後何十年かかるかな。
「わび・さび・イキよ。少ない資源でも楽しみようはあるわよ。文化は制約が多いほど表現が多様になるのよ」
意識改革によるごまかしって必要だね。
さて、辺境の老騎士の第六章から第七章の中盤まで読んだよ。
○第六章
4273年の第一次諸国戦争が終わって、しばらく王都で鬱陶しい御客さんが来る中ですごすバルドなのです。有名人って辛いね。
「連合元帥≪ワジド・エントランテ≫というあの世界の歴史ではじめての特別な位についた英雄だし、その前の冒険物語も大人気だしなぁ。」
で、4274年、皇都の方にも呼ばれたんだけど、タイミング良くマヌーノの使者に呼ばれたから、ささっとしがらみから逃げ出すことに成功したのです。
「引退老人なのに、72年73年と、2年ぐらい軍事関係で酷使されていたしなぁ。気楽な放浪旅が一番らしい。」
で、マヌーノの女王から、エジテの腕輪という、洗脳波に抵抗する腕輪をもらったのです。ちなみにマヌーノには効かないから、この女王も洗脳されてたね。
その後、大樹海の近くで焼け落ちた村があって、そこの復興があったよ。ゲリアドラという疫病をまき散らす植物の大発生で大変なことになって、それを焼き払う過程で燃えたらしいね。
同じくゲリアドラの大繁殖で故郷を失ったジュルチャガが決意して、ここで彼の旅は終わり、生き残った子供たちを守り、この地の村長になることを決意したのです。4274年9月の話だよ。
「大盗賊というより、一流の諜報員だったけど、ついに落ちつくのね。」
まぁ……、バルド一行も旅しない時はここに留まるから、別れではないけどね。
76年4月まで、この新村フューザリオンの復興と発展のためにバルドも旅せずに一生懸命内政とか魔獣退治とか色々したね。ほぼ何もなかった焼け野原が、後世の一代王国の元となった街へと発達していくのです。
例のやら100でやりたかったものの完成形がここに見られたよ。
「で、この村の生き残りに序章でも出てきた薬師ザリアがいて、この世界のSF的ななりたちが語られたわけで。」
神話チックにまとめられていたけど、早い話が、星間移民船の子孫がこの世界の人間たちだね。仮説は正しかったのです。
「『西の善き魔女』と舞台背景は似ているわね。元々は竜の世界で、彼らの世界と人間の世界を隔てるために壁が作られたという構造が一致しているわ。」
西の良き魔女では、竜というのがほぼ恐竜で、こっちでは、多分甲殻類系の知的生命体である竜人であるという違いがあるけど。。あと光の屈折をもたらす、巨大な透明な壁と、2000歩、つまり、富士山ぐらいの高さがある巨大な人工的な壁であるジャン・デッサ・ローか、という違いもあるね。
ええと、星間移民船が来たんだけど、他の人たちはしばらく起きられなくて、船員の一人である後のジャン王と呼ばれる人物が亜人種を平定して王になったらしいね。
その後、他の船員とか船長が起きると、船長は亜人種を奴隷に使う気満々だったから、それに反対して、船長派とジャン派の2つに分裂して、核兵器どころでない超兵器で大戦争だったらしいね。
で、ピンチになったジャン王は、この星のたぶん、異次元精神生命体っぽい精霊と融合合体して、初の精霊憑きになって、ピンチを脱したらしいよ。
「ニンジャソウルがオポゼットしたのね。」
大体あってるよ。身体機能が異常に強化されたり、寿命が延びたり、回復能力が異様に高まったり、筋力が強くなったりするよ。ニンジャ筋力なのです。
それを知った、船長派は精霊を捕まえたり捕食したりする方法を見つけて、ニンジャ軍団なのです。ソウカイヤだね。
で、結局ジャン王が船長派を打ち倒したのです。
その後、しばらく平和だったんだけど、魔獣が出現するようになったよ。
人間にとりこまれた精霊が寿命を迎えて再生すると、狂った精霊になって、動物に憑依して、人間を見つけると襲いかかるようになるのです。
「キンカクテンプルでハラキリパーペチュアルしたニンジャソウルがランダム憑依と」
大体あってるよ。まぁ、後に人間にとりこまれただけじゃ狂ったりしないと言うことが亜人種の伝承で分かるんだけど、一般的に人間に捕食された精霊は狂うと信じられているよ。
で、その魔獣を倒すために、神霊獣というたぶん精霊と呼ばれる精神生命体のうち滅茶苦茶強い個体を封入した魔剣が製造されたりしたんだけど、倒しても、妖魔とよばれる狂った精霊が別の動物に憑依して魔獣の数が減らないからどうにもならないと言うことが分かり、赤石という、転生した精霊を引きつける装置を人間世界の外に多数配置し、人間の生活域の周りに大障壁、ジャン王の多いなる壁≪ジャン・デッサ・ロー≫を作って、リスポーンした魔獣が入ってこないようにしたのです。ちなみに大障壁には、魔獣を鎮静化する青石と呼ばれる装置が組み込まれているよ。
「minecraftでいうと、スポーンブロックを生活域の外に配置し、徹底的に湧き潰しした範囲の周りに柵を作って、柵の上にこれでもかと松明をおいて、モンスターの背光性に期待しているような状態と。」
うん。そんな感じだね。赤石の周りに柵を作っておけばあんな長大な壁は要らないんじゃないかなと思わずにはいられないけど。スポブロ部屋とか、トラップタワーの中だけモブが湧けばいいのです。
で、パクラ領にある大障壁の切れ目は、精霊がいつの日か正常に戻る日を期待して、それが分かるようにわざと作ってあるらしいよ。あれがなければ、魔獣は入ってこないし、中の人間がその存在を知ることもないんだけど、精霊の正常化も知ることができないから、結構情緒的な理由で未来に期待しているのです。
ちなみに角の生えた家畜というのは、元々星間移民船に詰まれていた家畜なんだけど、狂った精霊に憑依されて魔獣化しないように、精霊避け器官として埋め込まれた者らしいね。だから、老化して、角が小さくなると、突然凶暴化したりするのです。
で、ジュルチャガとドリアテッサがくっついたのです。
「=-ω-= ちょっと予想外だったわ」
ええと、後から聞けば要所要所に伏線はあったけどね。。かくしてフューザリオンに新たな領主家系であるオルガザード家が生まれたのです。大盗賊が後の王国の始祖なのです。
「まぁ、足軽が天下統一したり、奴隷が天下を取ったりするのが現実でもままあるし、そういうこともあるかと」
ゴリアラ皇国のファファーレン侯爵家と親戚というのはかなりの後ろ盾らしく、この76年4月以降、急速に発展することになったのです。
で、中原のほうは相当きな臭いことになっていて、またシンカイ国が進行してきたよ。パルザム王国の領土がまた削られたり、皇国のほうはもっと深刻で皇王が洗脳されて、大変なことになったのです。同盟国なのにパルザム王国への兵站無視の無理な征服戦争を仕掛けようとしたよ。
ここで、バルドがまた戦争に駆り出されることになったのです。全然引退できないね。ロードヴァン砦暮らしが長いのです。
そして、物欲将軍ルグルコア・ゲスカスさえ倒せばなんとかなると言うことで、後に二十二勇士と呼ばれる決死隊が組織されたよ。成功しても、失敗しても、周りはシンカイ軍だらけだから死ぬのです。でも、平和のため、故郷のために命を投げ出すことを決意するのです。
「=・ω・= 漢たちの想いに胸が熱くなるわね。」
かくして、義経チックな鵯越の逆落としで、物欲将軍と二十二勇士の決闘が始まったのです。1対多はおかしいというけど、5体も神霊獣を取りこんで何百年も生きた、ほとんどモンスターな人だし、これぐらいの戦力差がないと勝ち目もないね。9人死亡、5人大けが、無傷の人はほぼいないという相当な犠牲を出して、ついに物欲将軍を撃ち果たしたのです。
「=`・ω・= 颯爽登場するゴドンがカッコいいわね。」
うん。事実上死が確定された所なのに、4271年の冒険を通じた友情パワーなのです。
で、あらかじめこうする予定だったのか、シンカイ軍は将軍の遺体を引き取ると静かに本国へ帰ったのです。何百年も国を支え続けた英雄で、ここ16年で狂う前は英傑として尊敬と崇拝を集めていた人なのです。長く生き過ぎて味覚が消失してしまうという悲劇に精神が狂って、世界征服みたいなものをしたのも、実際は、自分を殺してくれる人を探していたのかもしれないよ。かれもまた、一人の漢なのです。
「やら100の完成形をここに見たと。」
っていうか、探せば、この手の話の完成形はいたるところで見つかるのかもしれないね。ルニたちが無知すぎるのです。
「死ぬのも恐ろしいんだが、中途半端に生き残って、ずっと死ねないというのも恐怖以外の何物でもないよなぁ。特に、普通なら死ぬような色んな不具合がでても、無理やり神霊獣に生かされ続けるとか。」
味覚が亡くなった以外にも、内蔵が腐ったり、血液が毒だらけになったり、想像を絶する苦痛の中で無理やり生かされ続けていたらしいよ。恐ろしい話なのです。死ねると言うのは、神々の慈悲だなと思うね。
○第七章中盤まで
フューザリオンが滅茶苦茶発展するのです。カムラーとか、パルザム王国の知り合いの専門職の人がどんどん移住してきて、生活レベルが大きく向上していくのです。
後に、辺境の一代王国になると言うのも納得だね。
で、バルドは、精霊とは何か、魔獣とはなにか、そして暗躍する竜人や悪霊の王とは何かを知るために4278年3月、再び旅に出ることになったよ。カーズとゴドン、タランカ、クインタ、カーラの村の若者3人と一緒に、古い伝承をしる亜人たちを次々と尋ねる旅に出るのです。
その過程で、71年の辺境放浪旅で行った場所のその後の物語を知ることもできたのです。
7年もたつと、死んだ人もいるし、子供が大人になっていたりもするし、変化するね。
クラースクでのカーズと旧ザルバン公国の人々との再会はいい話だったのです。
そんな中、パルザム王国の王都に竜人がやってくるというなんだかすごい事件が起きたのです。バルドとその魔剣スタボロスが欲しいらしいよ。その時は本人がいなかったということで、79年1月1日に再び来るという約束なのです。
「竜人はジャン王との約束で大障壁の内側には入らないはずなんだけど色々状況が変わっているらしい」
水戸黄門が、歴史小説になり、開拓ものになり、戦争物になり、再び放浪旅に戻ったと思ったら、怪獣大戦争なのです。いろいろとジャンルが激しく変わって読んでて飽きないね。
かくして、約束の日はLotRのミナス・ティリスどころでない凄惨な戦いだったね。飛竜とか、この世界の軍事水準的に反則に近いんだけど、クロスボウでなんとか戦うのです。ゲルカストも近接戦では強いのです。ただ、数が数だし、どうにもならないから、使うたびに数ヶ月昏倒して要介護5になる魔剣の力を使わざるを得なかったのです。
空に向けて無数のブラスター弾丸とか、飛竜も酷いけど、あの剣も大概だね。ただ、使うたびに2~3ヶ月意識不明の重体になり、カーズが拭清とか、おむつ交換とかで大変な修羅場になるよ。床ずれが酷そうだね。
そして、近くに介護する人がいなかったら、使ったとたんに死ぬという大変使い勝手が悪い兵器なのです。
「あれだけ昏倒時間が長いとなると、事実上力の代償に寿命というか、生きていると認識できる時間がだいぶ削られるんだよなぁ。」
奇跡の力の代償って多い方がいいよ。物語の経済学なのです。
で、その後、別の竜人の集団がやってきて、今回迷惑をかけたのはその部族の中の反乱分子だと言うことが分かったよ。そして、見るからに巨大甲殻類っぽいし、パワーも圧倒的で誰も話しかけられなかった族長の娘に、敢然と話しかけ交渉したクインタとタランカなのです。フューザリオンの未来の明るさを暗示させたよ。
「若者の人材層が厚いわな。」
で、交渉によって79年4月1日に、バルド一行が竜人と一緒に彼らの集落へ飛竜に乗せて連れて行ってもらって、色んな事情説明を受けることになったよ。
この時代で、空を飛ぶというのは、貴重だね。
たぶんこの世界の年号って、着陸歴だと思うから、4000年ぐらいは、そういった文明的な体験をした人はいないかもしれないね。
「恐らくだが、船長とジャン王との戦いよりも後、その後のジャン・デッサ・ローができた後に一般の輸送されたコールドスリープ状態の人々、つまり「眠りし人々」が各地に植民されたわけで、その歳、数世代で文明的な記憶は消えたんだと思う。もしくは、最初から教えられなかったのかもしれない。」
壁の外は相当危険で、狭い生活域で暮らす必要もあっただろうしね。ただ、あの世界もだんだん技術進歩しているし、あと1000年もしないうちに飛行機が出てくるんじゃないかな。マナディートじゃなくても、高炉で精錬した鋼を高速で射出すれば、魔獣を殺せる程度の威力は出るだろうし、大障壁の外への進出も将来的にはあると思うよ。宇宙に出るのはだいぶ先だろうけど。
「別の星間移民船や本国との連絡はないのかしら?」
う~ん………、この恒星系の公転周期で4279年って、地球で言うと何年なのかよくわからないけど、大体この星の人間の年の取り方は年齢相応だし、地球の一年とこの星の一年はそんなに変わらないのかな。
となると、4000年もたつと、本国が残っているか微妙だね。偶然別の移民船が同じところに来ることもあるかもしれないけど、天文学的確率かな。他の移民船との連絡手段があるにせよ、電波通信だと100光年離れたところだと、往復200年だし、事実上、意思疎通が無理なのです。返事が来たころには相手はいないかもしれないよ。
「何かのシェアワールドネタで、昔はワープ航法ができたけど、乱用した結果空間のゆがみが酷くなって使えなくなり、結果、超光速通信もワープも不可能になって、それぞれの移民した星が孤立して、各々の歴史を辿ることになった、というのがあったような。」
現実でも、北極海航路が使えたり使えなかったり、大陸と日本がつながっていたりいなかったりと、時代によってルートが寸断されてしまうことってままあるよね。
スンダランドとか、陸地がつながっている時代に歩いて来たんだけど、海水面の上昇で無数の小さな島になって、分断されてしまったとか、よくあるのです。